charming records

ストリップファンが、ときどき本をつくります。

『ストリップと読むブックガイド』制作日記:9/15-18

下記の演目の内容に言及しています。

9/15(金):浅草ロック座『まつろわぬもの』第一期 3景(花井しずく)
9/17(日):チーム黒ばら(黒井ひとみ、萩尾のばら)「お嬢さん」

9/15(金)

仕事、月内はたいへんなのが続きそう。
浅草ロック座で『まつろわぬもの』第一期。古典や史実の、規範や権威に従わない者たちがテーマ。花井しずくさんの3景「虫めづる姫君」にわくわくした。新春公演でも感じたけど、花井さんの姫、いい。気まぐれな目の表情のつくりかたはザ・お姫さまなんだけど、時折ガチの虫オタの顔になる。ツンとお高くとまって、長い棒状のものを回すのがサディスティックで似合うんだよなあ。ベッド着でマラボーを芋虫にアレンジして、文字通り絡むアイデアもストリップならでは。
関連書のチェックが進むうち、年表を併録する方が各書の背景や流れが格段にわかりやすくなるよねと聞こえてくるのだけど、残り時間と作業量を思うと手を出せず……。まさにこの日、ファンの情報サイト・Strip NavigatorさんがStrip歴史年表を公開した。これだけの情報が、しかもネットにある、敬服。現在に近づくほど、出来事の取捨選択に中の人がかいま見える。何をどう調べてまとめたのか。この方はストリップを何年追ってるんだろう。

 

9/16(土)

道劇レディースデー。女がいっぱいの道劇で尖りに尖ったフリーダム興行……! しかし、すごいおかゆ食べる会(後述)との兼ね合いもあって断念、NDLへ。来週土曜は祝日で休館だからなのか、本館の資料受け取りカウンターの行列が廊下まで延びている。今日は別室の資料を主に見ることにした。成人指定がつくくらいの本は、やっぱり隔離されてるんじゃないかなあ。
ヌード写真集をめくっていると、時おり目を逸らしたくなって驚いた。裸はいつも劇場で至近距離で見ているはずなのに、“過激”さでいえばさらに上のものを見てきたのに、はじめてストリップを観た日からこう感じたことはない。劇場では、踊り子が見せたいものに対面した上で、わたしがどう見たいのか、なにを見たいのか、選んで決められるからなのか。
資料到着を待つあいだ、ブックガイドの寄稿者から改稿が届く。原稿がブラッシュアップされていく過程を追うのもすごく幸福な時間。どなたも芯になるものは最初の段階で既にきちっと書いてあってぶれないんだけど、加筆で勘所がぬっとあらわれて、全体の響きが変わることがときどきある。興奮する。
夜はすごいおかゆ食べる会。横浜中華街で、最少催行人数16名、1万円超えのすごいおかゆ鍋が食べられるということで、友がTwitterで音頭をとって半年前から参加希望者と日程調整をしてきた。見るからに桁違いの質のよさがわかる具材(アワビ、名古屋コーチン、ドキッとするくらいきれいな赤にキメの細かいサシが入った牛肉、and more)を順におかゆで煮込み、取り出されたものを食べていく、これを16品目繰り返し、すべての食材のだしが出た粥にあふれんばかりの油条をのせて〆。どの具材も光っていて出てくるたびに拍手が起こり、初対面のひとたちとわれらは王だと言い合いながら食べた。20年分くらいの慶賀を抱きかかえたと思う。

 

9/17(日)

待ち合わせして道劇へ。寄稿者で、かねてより劇場にご一緒したかった方と。
きょうは誕生日に贈ってもらったカラーマスカラを塗ってきた。9月は熱海での永瀬ゆらさんと黒井ひとみさんの796チームショー「卍」、浅葱アゲハさん周年、道劇での黒井さんと萩尾のばらちゃんの黒ばらチーム、と興奮が続くあまりインナーカラーに赤を入れたと話していたら、色を揃えてくれた。796を一緒に観に行った宿で渡してもらえたのがまた嬉しかった。
チーム黒ばらの「お嬢さん」、言葉と身体を支配する男の暴力から、女と女が自分たちだけの言葉と身体を取り戻す物語だった。お嬢さんが男から押しつけられた言葉を侍女が破り捨てる。教育が受けられなかった侍女にお嬢さんが文字の読み方を教え、ふたりで言葉を獲得する。侍女がお嬢さんに塗るネイルの爪から指へ、手の触れ合いへ、全身をあずけあってふたりで踊って、性愛へと、身体から関係性と自由をつくり上げていく。それでも、どうにもできない強大な暴力に抗うために、死でもなく、正面きって相手を倒しに行くのでもなく、闘い方として逃走を選ぶ道を見せてもらって、物語の、劇場の外の現実で生き延びることを思った。現実には、絶望的な人生を壊しにきてくれるひととのドラマチックな出会いはなかなかない。けれど、ストリップを観ていると、自分をがんじがらめにしているものが壊れる日がふと訪れる。わずかでもひびを入れてもらえる瞬間がいくつもある。
麗郷で台湾料理を囲みながらのおしゃべりも。ふたりで4品頼んだけどすばやく全皿出してくれて、トリプル進行中の外出でも心配ご無用。踊り子さんの好きなところ、きょう印象に残ったシーン、別の趣味、話は尽きなかった。「なんで『ストリップと読むブックガイド』を思いついたんですか?」と訊かれて、ほとんど思い出せなかった。

 

9/18(月・祝)

はじめての都立中央図書館。の予定が、ほぼ睡眠に費やす。夏は日差しの影響で毎年ねむれなくなって、心療内科の主治医に相談してくすりもつかうのだけど中途覚醒する。今年も8月頭からずっとこう。
返信とページレイアウトと原稿の校正と、とひとつずつ進めて三連休おわり。

『ストリップと読むブックガイド』

2023/11/11(土)文学フリマ東京37で初売り!
内容と販売情報はこちらから

cr-iwai.hatenablog.com