charming records

ストリップファンが、ときどき本をつくります。

『ストリップと読むブックガイド』制作日記:9/6-9

『ストリップと読むブックガイド』

2023/11/11(土)文学フリマ東京37で初売り!
内容と販売情報はこちらから

cr-iwai.hatenablog.com

9/8(金)で、下記の演目の内容に言及しています。

葵マコ「身体はいらない」
白雪「candy」
浅葱アゲハ 19周年作

2023/9/6(水)

『ストリップと読むブックガイド』に向けて本格始動した8月からつねに気ぜわしく、言葉が渋滞するようになってきたので、日記を書いてみる。とはいえ、やらねばならないことは山積み、キャパオーバーしそうになったらやめます。
図書館で資料の受け取り。この地域は蔵書が充実しているとはいいがたいのだが、郷土資料として劇場の文献はけっこう所蔵している。
借りたのは、巻末に掲載したいストリップ関連書。検索で書誌情報を拾い、実物で内容確認、本文に出てきた固有名詞や資料をリストアップしてまた検索、のくりかえし。小沢昭一『私は河原乞食・考』に、12年間皆勤してる僧侶スト客・通称「ヌード良寛」が出てきてウケる。クセ強名物客はいつの時代にも。
寄稿者から、ガイドの選書のご連絡が次々に。これを開封する瞬間が毎度たのしい。「そうだよね!」も「あの本がまさかストリップと!」も「こんな本があるのか!」も。役得。ひとと本をつくると、目算どおりにいかないことの方が多いのが面白くてたまらない。当初はこうしたかったけどポシャッてしまったことが、思わぬ方向から別のかたちで実現することになったりもする。
夜は、ウェス・アンダーソン監督の『アステロイド・シティ』へ。ウェスは極小の字幕を仕込んでくることがあるので、大きいスクリーンで上映しているうちにいそいで観なければならない。

 

9/7(木)

おやつに、日曜の熱海銀座劇場で3年ぶりに(!)偶然(!)会えた友だちがくれたお菓子を食べた。
井上ひさし全芝居』、布張りの表紙に大入り袋が空押しされていてかわいい。収録されている「日本人のへそ」は、スト客フレンドに「虚構の劇団」の解散公演を教えてもらって観た。作品の大半を占める劇中劇がストリッパーの物語なんだよね。井上ひさしは、学生のときから浅草フランス座の文芸部でストリップやコントの台本を書き、この作品で本格的に戯曲家デビューしている。上演記録を確認していたら、こまつ座で友だちの推し(とても有名な方らしい)が主演していてびっくり。
退勤後にピラティスのレッスンを予約していたが、ウェアを忘れていったん帰宅。毎週のことなのでリマインダーに入れてるのだけど、それでも忘れる、それがわたし。スタジオに着いたあとに気づいてたら受講できなかった、よかった。

 

9/8(金)

台風に備えて午前はリモートワーク、午後休をとって愛しの道劇こと渋谷道頓堀劇場。
開演直前に入って席を探すと、知った顔が既にふたり。どちらも遠征。Twitterで休館が決まってないことを確認してうちを出つつ、こういう日だからこそスト客は来るんでしょと決めつけていたけども。ご無事にたどり着けてなによりです。
葵マコさんの「身体はいらない」、念願の道劇で。大和ミュージックで、パンティストッキングをつかった演目の「パンスト大会」のために生まれた新作なのだけど、思いもよらぬパンストづかいに目をみはったのだった。ストッキングのような伸縮する素材、繭に似た袋のなかに裸体! 暗転したまま電飾が施されたスポーティーな衣装で登場する冒頭からパンストのベッドへ、「肉体」の生々しさから遠く離れた仕掛けがいくつも現れて、「身体」が無形のものとして立ち上がってくる。
白雪さんの「candy」、赤ちゃんっぽさも感じるルックスがハマるキュートなダンス、客にキャンディを渡す演出がたのしい(初めてと思しき女性グループが喜んでいた)。夜に眠りにつくベッドのあと朝を迎えた立ち上がりで、寝起きの伸びの動きがポーズに繋がっていくのに驚いた。脚を開きながらLへ伸ばしていく動きに、太陽が昇る動きや始まりのイメージも重なる。
浅葱アゲハさんの19周年作はかぐや姫。舞台につるされたペーパームーンが印象的だった。黄色い照明が当たって、ぼんやりとしたやわらかい月の光になる。下手に光を透過する月(手の動きが影絵になるのが美しい)、上手に光を反射して拡散させる月としてミラーボール。
寄稿者の方もいらしていて、演目の感想やマコさんの周年作のことなどおしゃべり。
めまいがきつくて3回めまで。仕事帰りの客が増えて、皆勤中の友人も来た。場内のボルテージがこれからさらに上がっていくのを確信しつつも道玄坂を降りる。湯舟に浸かったら、頭部が音叉になったようにじんわりと反響していた。

 

9/9(土)

台風と生理がてきめんに体調にひびいてるけどがんばって、国立国会図書館(略してNDL)の開館めがけて出かける。平日勤めゆえ、利用のチャンスは土曜しかない。そして、ストリップ関連書はNDLしか所蔵していないものがかなり多い。
NDLは閉架式で、資料の閲覧にはすべて申請が必要。今日はまず写真集に手をつけたのだけど(テキストが少なくて内容確認がすぐ済むと思った)、資料の受け取りは通常のカウンターではなく「別室」。階段を上がると、関係者用の薄暗いフロアの奥にガラス扉の別室がある。エッチな写真集だから、ではなく、傷みやすい資料(製本が強固でない画集や付録つきのムックほか)は分けて管理されているらしい。閲覧すると想定以上に情報が多く、複写することに決めるも、申請の範囲指定に必要なノンブルが掲載されてない。職員に相談し、どうにか書類を記入(仕事とはいえヌード写真をたくさん見るはめにさせてごめん)、別室からの持出手続の上、複写カウンターに運び、職員が確認のためたくさんヌード写真を見て(ごめん)、ページが外れているのが見つかり、しばし関係各所の協議が行われる。ほんとうにごめんなさい……。持出手続でページをめくったときにとれてしまったようですね、との結論で複写に影響はなかった。写真集は本をめいっぱい開けるように製本するので、ページが外れやすい。できあがりを待つあいだ6階の飲食スペースで昼食を摂り、2階でコピーと資料を受け取り、また3階の別室へ資料を返しに行く。次の資料の到着を待つあいだ、館内限定のデジタル資料を見る。どこでもすぐ閲覧できて破損の心配がない、なんて気やすいんだ。
永田町にはなにもない。ごはんは館内の食堂や売店に頼るか持ち込むしかなくてつまらない。永田町では絶対に働かない。
閉館後、新幹線に飛び乗れば熱海銀座劇場の開場に間に合うのは把握していたが、体調が追いつかなかった。永瀬ゆらさんと黒井ひとみさんのチームショー「卍」、黒井さんは明日おやすみなので今日が楽日。
帰りにスーパーで買い出しをして、寄稿者によるブックガイドページのデザインを最終調整(デザインは本文だけ自分でやってます)。ストリップ関連書リストの整理と進みぐあいのチェック。23日の土曜は祝日だからNDLは休館!