charming records

ストリップファンが、ときどき本をつくります。

『ストリップと読むブックガイド』制作日記:10/20-25

10/20(金)

仕事は年休を発動。ここから先はおそらく体力が落ちてゆくので、寄稿者20名のページの最終作業を済ませる。みなさんのご協力のおかげで、余裕を持って仕上げられたはず。このパートだけでも80ページ強。でも、関連書も併録されているよさはこれからまとめます。
田中小実昌深沢七郎色川武大、ストリップと縁が深い小説家の項を手直しするのに調べものをしていたら、嵐山光三郎がストリップ評論をやっていた噂が出てきた。
関連書を追ってきた期間、ストリップを書くこと、出版することが金儲けになった時代について考えていた。金にはならないとわかっていてもどうにか本を出したひとたちのことも。わたしは、金にならない、“役に立たない”からこそ、いまこの本をつくらずにはいられないのかもしれない。この根はストリップを観に行く動機と繋がっている。寄稿者のブックガイドにもその側面にふれられているものがあった。
スト客が「ルンバ」と呼んでいる、浅草ロック座の移動式ステージ。公式名称は「ワゴン」だそうです。勝山基弘『浅草ロック座昭和末年』より(寄稿は池内紀久世光彦!)。

 

10/21(土)

日光浴と運動を兼ねて、昼食は外で。セロトニンよ出ておくれ。明日は引きこもるつもりで、うちでぱぱっと食べられるおいしいものを買いこむ。以前から気になっていたパン屋や焼菓子の店へ。
ここ数日デザイナーさんとは装丁の調整の相談をしてたのだけど、いよいよ完成、入稿用データ作成をお願いする。めっっっちゃかわいい。こんなイラストで、キラキラさせたい、背以外の断面はこういう理由で染めたい、などリクエストしたところ、あれこれご提案でふくらましていただけて、このかたちになった。劇場のきらめきも紙の本の面白さもスパークしてる装丁、うれしい。
藤原審爾の小説『わが国おんな三割安』。新宿のお座敷ストリップ派遣事務所を営む夫婦のところに転がり込んでは出て行く女たちが繰り広げるドタバタ劇。寄る辺ない女たちを迎え入れ、ストリップを与え、次の人生へ送り出す夫婦は「とうさん」「かあさん」と呼ばれる。著者は踊り子たちに取材をしていた。

あやしげな踊りをみせる彼女たちに、つよく感じたことは、ほんの小さなつまずきが、このわたしらの国では、女性たちにはげしい打撃を加え、まるで二度とたち直れぬようにしているごとく、見うけられたことです。それは彼女たち自身のよわさや、人生がみじかすぎることばかりでなく、世の中の出来やわたしらの薄情さのせいであって、実にかなしいことなのでした

「作者のことば」より。いまも変わらないね。本作は電子で復刊しています(Kindleはないのだけど)。
関連書ページには20名のガイドとの接点がある本も。整理しながら、寄稿者の選書眼にあらためて感服するなど。

 

10/22(日)

 へんな連中たちのことを書く。私が幼い頃から憧れ、共感し、或いははらはらしたり、そうら見ろと思ったり、体質的に自分の先輩と深く思って片時も眼を離さなかった浅草の連中のことである。

雀士として阿佐田哲也名義でも執筆していた無頼の作家、色川武大が浅草を書いた『あちゃらかぱいッ』の冒頭。色川は神楽坂から浅草まで徒歩で通いつめていたらしい。芸人の中でも、エノケン古川ロッパのような「成功者」ではない者たちを小説として掬い上げようとしたのが本作。
関連書データに載せないことにした本のことを思う。載っているのはある種「成功者」ではある。ここまで、載せる・載せないの判断にはかなり頭を抱えてきた。こぼれ落ちるものを拾いあげてこそ、ミニコミでありストリップでは? カストリ雑誌文化のことも頭をよぎった。
家から一歩も出ないで、きのう買い込んだおいしいサンドイッチほかでエンジンを燃やした。
明日も仕事に行ってる場合ではないのだが、印刷代を稼ぐわよ。

 

10/23(月)

予定では、余裕を持って編集作業をすべて終わらせるつもりだった日。
関連書の説明文の執筆、うちの本棚にあって既読のものばかりがあと回しになっていた。このデータをつくってみて、ストリップの書籍がそれはもうピンキリなのがよくわかったけども、なにもわかってなかったころ、古書店橋本与志夫『ヌードさん』に遭遇して買っておいたのは運がよかった。京都市の岡崎でのこと。「特出し」以前のストリップ黄金時代が丁寧にまとめられていて、上演記録を辿ることができる。前にまさご座へ行ったとき、駅から向かう道の途中にある古書店・徒然舎で踊り子のジプシー・ローズの本を見かけた。
NDLの関西館から遠隔複写が郵送されてきた。東京本館ではデジタル化作業中で確認できなかったもの。ギリギリが過ぎる。

 

10/24(火)

いまになって、新たな関連書の存在に気づいてしまった。内容確認は即日できなくもないけど、この段階ではページ数調整がどうにもならず、あきらめます。不覚……。
読んでは直しの反復。どうしていまこんなに直すべきところが出てくるのか。
中谷陽がストリップに衝撃を受け、まったくの出版素人からスト専門誌『ヌード・インテリジェンス』とインテリジェンス社を立ち上げた経緯には励まされる。インテリジェンス社から出た『ストリップ昭和史』の組版は、ちとつたないもんなあ。寄稿しているストリップ研究家・丘陽一の著者近影がかわいいので、機会があったら見てください。劇場でのひとコマ。

 

10/25(水)

通勤中、各ページを読み返す。印刷所のしめきりが17時ということで、昼休みに仕上げ。ソフトが不調でしょっちゅうフリーズし、画面の前で繰り返し励ます。休憩が明けるギリギリに印刷所へ送信。ここまで歯の根が合わなくなっていた。
データに不備がある場合、印刷所から連絡がきて納品が遅れる。最悪、文フリに間に合わない。午後の仕事中に携帯が鳴っておびえていたら、他現場のクリスマスイベ当選のおしらせでした。
同僚と雑談の延長でいっしょにスマホで猫の写真を見ている最中に、データ問題なしの通知。安堵も達成感もまだない。まずは早く関係者に目次を見てもらいたい!

『ストリップと読むブックガイド』

2023/11/11(土)文学フリマ東京37で初売り!
内容と販売情報はこちらから

cr-iwai.hatenablog.com